東京百景

大学卒業後、新卒でカーディーラーに就職した。土曜日はカタログが本社から届く日で、それを、ひとりのおじいさんが各営業所に配達していた。そのカタログを店内まで、おじいさんと一緒に運ぶ。
ある土曜日の昼、いつもはダルがって手伝わない上司が今日に限って手伝いにきた。目当てはカタログではなく、おじいさんのようで「この前はありがとうございました」と感謝していた。

 見た目はひょろひょろで、ボロボロの服にボロボロの帽子、眼鏡の掛け方も鼻当て部分が鼻頭に当てて掛ける東国原スタイル。クソデブ上司はギャル、金が全てという品性のない人なので、その光景には驚いた。なにに感謝しているのか気になったので、少し近づいて聞いてみた。芸人の又吉先生に関する話をしているようだった。僕も又吉先生は中学生の頃から好きだったので、会話がひと段落した後、上司に尋ねてみる事にした。
機嫌が悪い日は話しかけても無視されるが、今日は機嫌がよく会話にも対応してくれた。クソデブ上司によると、あのおじいさんは又吉さんとは古くからの知り合いらしく、この前おじいさん経由でサインをもらったので感謝を伝えたのだそうだ。本当なのだろうか。大阪のおっさんは嘘を平気でつくので信じる事ができない。
次の土曜日、真相を確かめるために、思い切っておじいさんに尋ねてみた。「わしな。あいつの実家の隣にすんでてん。よううちの息子とも遊んでたわ」ほんまか…このおっさん嘘ついてんちゃうん…と一瞬思ったが、このおっさんの住んでる場所は高槻。又吉先生の出身も大阪の高槻。一緒や…。「小さい頃、一緒に球蹴りしたわ。」又吉先生は高校までサッカーをしていた。おっさんが言う事、だいたい又吉先生の情報と一致している。僕は信じる事にした。仮にこのおじいさんが嘘をついてたとしても、こんな面倒な嘘のつき方するだろうか。 。サインも自分で書いて、情報も集めて、そんなアホみたいな事してメリットがない。
僕は又吉さんが好きだとおじいさんに伝えた。そしたら、また帰ってきた時にサインを頼んでおくと言ってくれた。しかし、半年でカーディーラーを退職してしまったので、又吉先生のサインをもらう事はできなかった。また本当におじいさんが又吉先生の知り合いなのか解明もできなかった。
でも、一つ夢ができた。いつか又吉先生に会って、その真相をきく。そしてサインをもらう事だ。

「東京百景」を読んだ。
僕たちは誰かを喜ばすために生きているわけではない。あなたも。きみも。あいつも。おまえも。ただ生きている。その辺に咲いている花と同じ。人間を喜ばすために咲いているわけではない。ただ咲いているだけ。日光を浴びて、雨に降られてただ咲いている。

たまに心が不安定になる時がある。そんな自分を肯定してくれてるようで嬉しかった。また読み返したい。
東京百景 (角川文庫)

東京百景 (角川文庫)

開幕

「暗闇の奥でモノノケノダンス♬」する丑三つ時、今日も死んだ祖父が寝ている僕の身体を叩いて「ブログを書け、ブログを書け」と耳元で囁く。


「書かない。寝る。」

「いや、書け。さもなくば…」

「さもなくば…どうなんの?」

「さもなくば…(シュ…)」

「おじいちゃーーーん‼︎‼︎」


肝心な所でいつも彼は姿を消す。思い返せば、息を引き取る瞬間も、モゴモゴとなにか伝えようとしていたが、この事だったのだろうか。動く口の形も「ぶ……ろ……ぐ……」となっていた気がする。そんな祖父のために、ブログを開設してみた。


内容は冒頭でもお分かりの通り、しょうもない事をダラダラ書き連ねていく。日々思った事、観た映画の感想、読んだ本の感想。毎日はしんどいので、適当に気分で。


読む側も適当に読んでください。冒頭で読むのやめてくれても構いません。読んでくれただけで嬉しいです。死んだ祖父も喜びます。あと、冒頭の祖父の下りは嘘です。